大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)70号 判決

一 請求原因一及び二の事実(特許庁における手続の経緯及び本件審決の理由の要旨)については当事者間に争いがない。

二 そこで、本件審決を取り消すべき理由の有無について検討する。

(一) 原告主張の取消事由1及び3について。

原告の右主張は、要するに、引用例のギターは、その胴部の左側中央よりやや上部が奏者の右腕でかくされ、胴部の下半部の左側は写真がカツトされているため、本件審決が引用例の意匠の構成として摘示した事項、とくに、(1)胴部左右側中央よりやや上部を凹弧状にくぼませ、(2)下半部の左右両側は大きくふくべ型に形成した点を認定することはできないとし、これを前提として、審決の類否判断の違法をいうものであるところ、なるほど、成立に争いのない甲第三号証(引用例掲載誌)によれば、引用例のギターは、原告主張のとおりその一部を現実に看取することができない状態にあることが認められる。

しかしながら、いずれもその成立に争いのない乙第一号証の一、二及び乙第二号証の一ないし三によれば、ギターの形状は一〇〇年近い以前からほとんど変らず、とくに、本件審決が本件意匠と引用例の意匠との双方の構成中に摘示した「胴部の左右側部中央よりやや上部を凹弧状にくぼませ、下半部の左右両側は大きくふくべ型に形成し」た点等は、ギターの基本的形状とされていることが認められ、右のように胴部が通常左右対称とされていることを念頭に置いて引用例を見れば、引用例のギターの奏者の手及び写真のカツトによつてかくれた部分についても、他にこの部分がとくに通常の形と異なるものであることを示唆するような表示はないから(胴部上端部が喰い違い状になつているからといつて、胴部中央よりやや上部ないし下半部まで当然左右対称でないとは考えられない。)、そのかくれた部分についても、本件審決認定のとおりの構成になつているものと認識するのが自然であり、したがつて、本件審決の右認定には誤りはなく、その誤りであることを前提とする原告の主張は採用できない。

(二) 原告主張の取消事由2について。

成立に争いのない甲第二号証(本件意匠の意匠公報)と前記乙号各証と対比すれば、本件意匠は、胴部上半部正面よりみた喰い違いの点を除けば原告のいわゆる立体形状としても、胴部右側上端の厚さその他の点においてとくに通常のギターと異なるところはないと認められ、したがつて、原告主張の斜視図のようなものがなくても、前項と同様の理由で引用例のギターの胴部右側上端が本件意匠と同様の構成になつていると認識することは容易ということができる。そうすると、本件審決が、本件意匠及び引用例を通じ通常のギターと同様の構成とみられる部分についてはとくに摘示せず、通常のギターと意匠上顕著な差異を含む正面の構成を対比して類否の判断をしたことにより全体観察による比較検討を怠つたということはできず、また、本件審決が、原告主張の点で引用例の構成の認定を誤つたとすることもできない。

(三) 本件審決のその余の判断について。

以上のとおり、本件審決には、原告主張の点において判断の誤りはなく、その余の点においても、これを取り消すべき違法の点はないから、その取消を求める原告の請求は失当である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!